【ブックレビュー】奇跡の脳ー脳科学者の脳が壊れたときー(ジル・ボルト・テイラー)

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奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき (新潮文庫) [ ジル・ボルト・テイラー ]

価格:680円
(2017/11/1 16:59時点)
感想(12件)



脳科学者である「わたし」の脳が壊れてしまった―。ハーバード大学で脳神経科学の専門家として活躍していた彼女は37歳のある日、脳卒中に襲われる。幸い一命は取りとめたが脳の機能は著しく損傷、言語中枢や運動感覚にも大きな影響が…。以後8年に及ぶリハビリを経て復活を遂げた彼女は科学者として脳に何を発見し、どんな新たな気づきに到ったのか。驚異と感動のメモワール。 (「BOOK」データベースより)

医学的な「脳卒中からの回復記録」ではない。脳科学者による素敵な「宇宙体験記」

脳科学者であるジル・ボルト・テイラー博士が脳卒中に見舞われた実際の体験を克明に記録した一冊。左脳の機能が失われ、右脳優位となった脳に世界はどのような場所に見えるのか。
私たちが顕在意識、潜在意識と区別している世界をこれほど具体的に表した記録は珍しいのではないでしょうか。最先端の脳科学を研究している著者が、一歩間違うと「オカルト」とも取られかねない異世界を垣間見た記録という意味では記念碑的な作品です。

これは単なる「脳卒中克服記」ではなく、脳の中に宇宙と繋がっている部分があることを認識した一人の脳科学者による「宇宙体験記」です。引き寄せの法則や潜在意識の世界が実在することのヒントが随所に散りばめられています。
著者自身がそうであるように読者である私たちにも大きな「気付き」を与えてくれる本書を印象に残った一文と共に紹介します。

祝福されて、幸せで、そして全知であるかのような感覚

ジル博士の脳卒中は認知能力や分析的な判断を司る左脳で起こりました。左脳の機能が失われていく中、右脳だけが判断する世界の印象を彼女は「わたしは穏やかで、守られている感じで、祝福されて、幸せで、そして全知であるかのような感覚の虜になっていました」と表現しています。

私が興味を抱いたのは引き寄せの法則という言葉の元祖ともいうべき、エイブラハムの引き寄せの法則シリーズの著作の中で「”無常の幸福”はこの”宇宙”の基本、”大いなるすべて”の基本です。それはあなたへと流れてきます。(新訳 願えば、かなうエイブラハムの教えより引用)」と語られています。ジル博士が”右脳優位”の脳で感じ取った世界は、正にエイブラハムが語る”宇宙の基本”であったと言えます。

いつも人を支配している左脳の声を黙らせるだけでいい

脳卒中によって得た心の平和の在処に対する「新たな発見」をジル博士はそう表現しています。
ジル博士は論理的な思考を司る左脳の機能が失われたことで、右脳が感じ取っている穏やかで幸福な世界を垣間見ることができました。それは脳科学者である彼女にとって文字通り人生が変えたパラダイムシフトとなりました。

脳科学者による「左脳を黙らせる」という痛快な表現は、潜在意識の世界をありのままに体験し、なおかつ科学的な根拠に基づいたジル博士ならでは一文でしょう。人は権威者の語ることを信じる傾向にありますが、私もご多分に漏れずこの一文に「見えない世界を信じてもいいんだよ」とジル博士にお墨付きをもらったようで嬉しく感じました。

ちっぽけなクソ委員会

内なる安らぎの感覚を台無しにする可能性を持つ思考パターンをジル博士はそう呼んでいます。この連中の生きがいは、しくしく泣いて、不平を並べ、あらゆることがいかに酷いかをみんなに言いふらすこと。
左脳によるマイナス思考を「クソ委員会」と言い放つジル博士に拍手です。

わたしとあなたがどこにいても密接な関係が生じます

私は引き寄せの法則や潜在意識といった思考の世界を知れば知るほど、人々は全て繋がっていて目には見えなくても祈りは必ず相手に届くといった考え方が好きになりました。それは私に幸せを祈りたい人がいるからでもありますし、祈りが届いていてほしい、そして出来ることならいつかそれに気付いてほしいという希望でもあります。

ジル博士は「右の脳は全体像を感じ取り、自分の周囲や、自分の内部の全てのものは、宇宙という織物に織り込まれたエネルギーの粒子で作られていることを理解しています」と述べています。
引き寄せの法則でよく言われる「全てと一体である」を見事に表しているのではないでしょうか。

「いま、ここに」

時間や空間といった認知を司る左脳の機能が失われたジル博士。時間の繋がりという概念は無くなり、時間は流れず瞬間瞬間が独立したように感じ、体と空間の境界線も曖昧になり宇宙と一体になっている感覚を味わったそうです。引き寄せの法則に限らず、仏教でも、「嫌われる勇気」で一般的に認知されるようになったアドラー心理学においても「今ここ」という感覚はとても重視されます。本書においても「いま、ここに」という表記が多く登場します。

「今ここ、この瞬間」にしか生きられない私たちは左脳による認知のおかげで時間が繋がっているように感じているだけ。最も大切なことは、過去を悔やんだり未来を恐れたりせず「今ここ」の感覚を大切に感じることでしょう。そして「今ここ」から人生の全てが織り成されていくことを改めて痛感しました。

レビューまとめ

引き寄せの法則に関連するもの、仏教の教えや自己啓発に関連するものを様々読んできましたが、それらの精神世界を脳科学者が体験した本書は私にとっては非常に興味深い一冊でした。あくまでも前向きに治療に臨むジル博士の勇気と、時にユーモラスな表現を交えるチャーミングさに最後まで楽しく拝読しました。

また脳卒中となったジル博士の台詞や心の声は平仮名で再現してあり、臨場感のある素晴らしい訳に仕上がっています。平仮名にするだけで子どもに戻ったかのようなジル博士の病状を見事に再現する日本語の素晴らしさにも感心しました。
きっと本書を読んだ誰もが「私も右脳優位に生きたい!」そう思うはず。とても素敵な「宇宙体験記」です。

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直島 章真(Naoshima Shoma)

引き寄せの法則に代表される思考の世界に出会って15年。 元々は「理論的に引き寄せの仕組みが納得できないなら始めたくない」というひねくれ者。 思考に思考を重ねてようやく辿りついた独自の理論による不思議で素敵な思考の世界に皆さんをご案内します。 引き寄せで悩んでいる人、心が疲れてしまった人、そんな人たちに響く言葉がきっとあるはず。そう信じて言葉を紡いでいます。